目覚めたとき わたしは海に寝ていた
どうりで手触りがなかったはず
海はふわりと暖かかった

それからひとりずつ身を乗り出して
わたしのなかに飛び込んでいった
海だったから波もあったし 月も沈む

今日は少し夏が戻ってきた日
蝉が鳴き 街が虚ろにざわついていた
夏のあいだに吐き出した糸が 夜明け前の雨に
街の白い壁に張り付いていた

眠りは浅いと深いを繰り返し
川は海に流れ込み 海は川を迎える
激しさが和らいだところから また海がはじまる

夜になって 半分眠りに落ちた街 静かで広い
昼間の明るいうちは歩くとすぐに 行き止まりか誰かに出会う
誰かに出会うことや行き止まりがあることで
ひとは安心するんだろう 昼はそれでもいい
誰にも出会わず行き止まりがない 夜の街は 海

海が混ざり始めたのを見計らい すり抜けるように 夜に入る
蒼い街灯を魚の影が行過ぎる
青と碧が合わさった色のアイスクリームに手を伸ばす
きっとわたしの知らない街の片隅で 海は開かれていく

 


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